デンマークのシングル女性・同性カップルの妊娠・子育て

Netdoktorという信頼できるサイトから、デンマークの選択的シングルマザーに関する興味深い文章を抄訳する(原文は、ローネ・シュミット教授:医学博士による)。

デンマークで、パートナーのいない女性が不妊治療を受け、ドナー精子との人工授精によって選択的シングルマザーとなることが許されたのは2007年のことである。デンマークで不妊治療を受ける女性全体の15%がシングルであり、クリニックでの不妊治療の末に生まれる子どもの12%ほどが選択的シングルマザーの子どもとなっている(外国から不妊治療を受けに来る人は除く)。

デンマークの不妊治療を受けるシングルの女性を対象とした調査によると、不妊治療を始める際の女性の年齢は平均36歳であり、そのうち83%にもなる女性が一緒に子どもを作りたいと思えようなる新しいパートナーを探すには、十分な時間が残っていないと感じている。そして、事前に十分な熟慮をし、家族や友人との協力の可能性を探ったうえで、子どもを産むという決断に及んでいる。自分の兄弟や親、親しい友人男性といった何らかの形で、成人の男性が子どもの生育に関わるようにしているケースも多いこともわかっている。

デンマークでは、匿名のドナーとオープンドナーといわれるプロフィールを明らかにしたうえでのドナーが選択できるようになっている。匿名のドナーの場合には、瞳の色、髪の色、身長、体重、肌の色という情報だけから選択する。場合によっては拡張プロフィールによって、ドナーの子ども時代、家族構成、職業等を知ることもできるが、どこの誰かということはわからない。オープンドナーの場合には、子どもが18歳になった時点で希望すれば、父親がどこの誰なのかを知ることができるとされている。精子バンクを利用する以外にも、知り合いの精子提供を受けて人工授精を受けることも可能である。

イギリスでは、シングルの女性に対する不妊治療はずっと許されてきた。そのため、(ドナーの父を持ち)選択的シングルマザーの下に育った子どもと、二人の親の下で育った子どもを比較する調査研究などの蓄積もある。それによると、選択的シングルマザーと両親がそろった子どもで、親としての質に有意な差は認められなかった。加えて、母子の葛藤に関していえば、両親揃った場合よりも選択的シングルマザーのほうが稀であることが分かっている

選択的シングルマザーの下に生まれた子どもは、早いうちに自分がどうやって授かったのかについて伝えられることが多いが、実際、大きくなるまでこの事実を告げられないと生育によくない効果があることがわかっている。別の調査でも、成人する前にこの事実を知らされたことで、自分が愛され、望まれて生まれてきたのだと感じられることが多いとされている。

ドナーの父を持つ7歳から13歳までの子どもに対して行った調査では、母親とより緊密な関係を築けている子どもほど、ドナーに対してもより好感的なイメージを持っていることが分かっている。半数程度がドナーを他人と感じているのに対し、それ以外は生物学的な父親と感じていたり、ドナーをどう感じていいかに関して白黒つかない感情を持っている。

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パートナーと不妊治療に励んでいたデンマーク人の友人は、結局彼と別れてしまった。40歳になり、子どもが欲しいという夢と葛藤を続けていたが、先日、「今、ホモセクシャルの男性と約束をしたところで、妊娠を試みているところだ」、と話してくれた。彼女にとっては、まったく知らないドナーが父親であるのと異なり、同様に子どもが欲しいと望むホモセクシャルの男性との助け合い子育ては納得できる選択肢のようだ。

また別の文脈でも先日、16カ月の子どもを持つホモセクシャルのカップルにも出会った。レズビアンのカップルと約束を結んでおり、母親の違う子どもが二人いるという。こうした同性カップル間で約束を結んで子育てをしている家族はレインボーファミリー、子どもをレインボーチャイルドと呼ばれる。共同親権ではない日本では、こうした子育てはできないだろうが、将来的には十分に意味のある選択肢となっていくだろう。与えられる選択肢は、広げていくことで将来を築かならなければならない。選択的シングルマザーは、こうした可能性を広げていくうえで、今の日本でもできる少子化対策の第一歩だと考える。

コペンハーゲンの家賃でお悩みの方は、知っておくべき権利

住宅難のコペンハーゲンでは、日本からやってくる若者のみならず、それなりの人脈ネットワークを持つデンマーク人にとっても、アパートを探すのは非常に困難だ。外国人としてやってきて、何とか自分の力で住まいを探そうとするものの騙されたり、高額の家賃を吹っ掛けられながら、仕方なく払っているようなケースも多いだろう。これまでもコペンハーゲン等の大都市での住宅難については触れてきたが、若者の進学指向や住宅価格が高騰し続けていることなどもあり、都市部での住宅探しは変わらず困難である。

賃貸住宅のサイトなどをオンラインで探すほか、地元の新聞に広告を出したり、図書館にチラシを貼ったり、口コミを頼るなど、手を尽くして何とか住まいを見つけている人も多い。そうなると、こうした状況に乗じて、到底、広さや条件と見合わない家賃を吹っ掛けて、一儲けしようという人たちも出てくる。しかし、デンマークには、個人間の住宅の賃貸に関しても明確なルールがあり、需要があるならと勝手に上げ続けることはできない。

まず、アパートを借りるうえで忘れてはならないのが、必ず賃貸契約書を結ぶこと。デンマーク語のひな型はネット上でも手に入る一般的なものだが、公式ではないようだが英語訳もネット上で手に入る(信頼できそうなところからのリンクを貼った)。これらに明記された条件に納得したうえで署名をしないと、退去時に保証金が返ってこなかったりというトラブルにもつながるので、忘れないようにしたい。

どう考えても高すぎる賃料を払っているという考えられる場合には、各自治体の賃料審査会に不服申し立てをすることができる。審査会は、その地域での同種の住宅と比較して妥当と思われる金額を割り出し、払い過ぎがあった場合には過払い分を返却する命令を出す。私自身は借主でも貸主でもないが、ひょんなことからこのケースに関係者としてかかわることになり、やり取りを逐一観察する機会に恵まれた。デンマークに住む日本人の中で、不本意にも過払いをしているケースも多いと思われるので、参考までにケースを記したい。


【ケース】 東欧人の若者が借りた41m2の家具付きアパート。こちらでいうところの「1部屋のアパート」であり、大きな居室にトイレ・シャワー、キッチンがついている独立した住居。ベッドやソファ、テレビといった家具付きではあったものの、特別贅沢な作りだったり、貸すために新しい家具を入れたわけでもない。月額12.500DKK(20万円超)の家賃を1年間払い続けた。

ペンは剣よりも強し。弁の立つものは勝算も大きい。自分の力で不服申し立てをして戦うことができない人に代わって、係争を進めてくれるところがある。法学を学んだ若い学生たちが立ち上げたベンチャー企業で、大きく成長している。委任状にサインすると、作業を進めてくれて、成功報酬は過払いとして返却された金額の30%。非常に明快だ。敗訴すれば、報酬はゼロだが、敗訴したケースはこれまでにないという!(95%以上と書いてある)

賃料審査会とのやり取りは、公正に行うため、関連パートにメールにて意見聴取という形で行われる。「こういう陳情があるが、事実と異なる点や強調したいことなどがあれば何でも申し立てよ」、と貸主に連絡が行くところから始まり、それを受けた貸主が、この家賃がいかに正当なものかという弁明をしたためたメールを審査委員会に送る。その写しがそのまま訴人(上記代理人)にも送られ、さらにそれに対する異論が審査会にメールされ…という具合に、お互いに言うことがなくなるまで繰り返される。

借主の代理人は、弁論などで鍛えたのであろうか、こういえばああいうという貸主(これも法学を修めた若者だった)に実に理路整然と、正々堂々と議論をし、第三者としてメールのやりとりを見ていても心が晴れやかになるようだった。そして、このメールでの議論が済んでまもなく、審査会から4人(審査会会長、自治体の貸主代表、自治体の借主代表、審査会秘書)は当該アパートの査察に訪れる。貸主や借主など、ステークホルダーは皆査察に同席することができる。今回のケースでは、貸主だけが現れ、審査委員会に対して当時の写真を見せたり、最後の訴えをしようとしていた。とはいえ、たった一部屋のアパート。10分ほどで査察は済んだ。

そして、翌日。調査報告書と結論、そしてその根拠となった法令文がステークホルダー全員に送られた。周辺地域の住宅とアパートの状況に照らし、今回のケースで妥当な家賃は月額4.100DKK(6万6000円ほど)也。適正価格の3倍も請求していたと明快に糾弾し、過払い分に利息をつけて返却すべし、とされた。ぐうの音も出ない。

鮮やかな勝利に思わず、借主代理人におめでとうと連絡したくなった(笑)が、彼らは慣れたものなのだろう。およそ100.000DKKの過払いで、成功報酬30.000DKKが彼らの下へいくはずだ。彼らのしたことは、代理人としてメールで賃料の妥当性を疑う弁論を展開しただけだ。しかし、正義の鉄槌が下り、しっかりと声なき人たちが不当に搾取されるのを防いだ。借主が委任状にサインした日付からわずか5カ月ほどで終結している。

もしもあなたが、コペンハーゲンで(不当に)高い家賃に悩まされている場合には、訴えるための条件等を確認したうえで、同社にコンタクトとしてみるのもよいだろう。英語でも可能だ。(賃借の状況を伝える段階でコミュニケーションに不安のある人は、当方に連絡をくださればMadogucciが代行のお手伝いします)

非婚シングルマザーの権利

この1月から、デンマークの文化・教会大臣としてジョイ・モーンセン(Joy Mogensen)が職に復帰した。それまで務めていた ロスキレ市の市長職から、昨年6月に社会民主党内閣が組閣された際に、同大臣として抜擢された39歳の若い女性である。彼女は匿名ドナーからの精子提供を受けて女児を妊娠をしていることを公表しており、選択的シングルマザー(通称、ソロ・マザー)として2019年10月に出産する予定になっていた。8月には新聞に「市長職であれば9か月育児休暇を取る予定だったが大臣職となったため、なるべく早く復職する予定」と語っている

ところが、出産予定日より少し早い10月5日になって、胎児の死亡が確認されたため、死産をした。それを受けて、直ちにフレデリクセン首相は、モーンセン大臣が無期限で哀悼休暇に入ることを宣言、モーンセン大臣は3ヶ月の休暇を経て、この1月から復職した経緯である。(なお、この哀悼休暇は子どもを死産した場合、あるいは出産後32週以内に子どもが亡くなった場合に、母親にも父親にも適用される権利で、14週間、通常の育児休暇と同じ給与補償がある)

こうした法令を見る際につくづく実感されるのは、デンマークでは通常想定される母親、父親像だけではなく、LGBTなどにも配慮した権利が明記されていることである。上記の哀悼休暇の説明文にも、「死産した子どもの母親である場合、」と始まり、「亡くなった子どもの父親、共同母親の場合にもこの休暇を取る権利がある(強調は筆者)」と明記されている。女性同士のカップルで直接妊娠していなかったほうの女性へも同等の権利があることがわかる。また、モーンセン大臣の件でも明らかなように、ソロ・マザーであっても当然、このケースに該当する。

折しも、日本では先月に 「寡婦(寡夫)控除」の適用拡大が決定され、ようやく未婚のひとり親に対しても、同等の権利が与えられる方向に動き出したところだ。個人を単位としておらず、戸籍のような家族単位を使うために、結婚しているかいないかといった基準で区別・差別をしてきたことは、極めて不自由で非合理だと思う。 2019年の日本での出生数は 86万4000人にまで落ち込んだ。若者が子どもを産みたいと思う気持ちをもったら喜び、どんな形であっても生まれてきた子どもを親とともに社会全体で大切にしていくことを、しっかりと示していく環境があってほしい。望まれて生まれてくる子どもは、非婚の子どもであっても、同様に大切な命で社会の宝である。私は非婚シングルマザーを応援し、これが日本にとっても少子化に向き合うための一つの重要なキーになると確信している。

選択的シングルマザーになることを検討されている強い女性、デンマークから応援します。実際に子どもが生まれてからの選択的シングルマザーの生き方についての蓄積もデンマーク国内では多く紹介されていますが、まずは妊娠までの積極的なお手伝いを考えています。デンマークで人工授精したいとお考えの方、右上の「選択的シングルマザー」の項をお読みのうえ、ぜひご連絡ください。